③ペンギントラベル、飛び立つ前に破産?

いやいや、ちょっと待って。

これは笑っている場合ではない。

旅行業の教科書で見た言葉が頭の中をぐるぐる回り始めた。

特別補償。

変更補償金。

約款。

こんな場合はいったいどうなるのか。

目的地が変わったら、何か払わなければならなかったはずだ。

天候のこととはいえ、もし私が全部費用を負担することになったら?

あるいは、お客さんに返金しなければならなかったら?

ペンギントラベル、飛び立つ前に破産ではないか。

私はただ、トゥバタハの海を楽しみたかっただけなのに……。

お客さんにもトゥバタハの素晴らしさを知ってもらいたかっただけなのに……。

部屋で、タブレットとの格闘が始まった。

情報収集だ。

ほかの船にもメールしてみよう。

Discovery Palawanは私の本命だったクルーズ船。もう満席と断られ、泣く泣くあきらめた船だ。

5月25日午後1時34分。私は、そちらの船も台風でキャンセルになったのか、キャンセルなら返金するのか、と尋ねた。

【問い合わせの和訳】
こんにちは。本日(5月25日)のクルーズは台風のためにキャンセルになったのでしょうか?
もしキャンセルになったのであれば、お客さんには返金するのでしょうか?

【返信の和訳】

ヒロコ様

こんにちは。

フィリピン沿岸警備隊からはまだ通達が出ていないため、現在待機中です。

敬具

なに? まだ待機中? 出航中止じゃないの?

同じトゥバタハへ向かう船なのに、どうして状況が違うのだろう。

そこでまた頭をよぎる。

こんなことになっているのは、私の船だけなのでは?

つまり――

やっぱり、騙された?

1980ドル。

私のような人間には大金である。

あまりにもショックだったため、ぼーっと歩いていたら、車にはねられそうになった。

でも、ここでしっぽを巻いて帰るわけにはいかない。

確かめないと。

せめて一度、乗客を集めて、

「こういう理由で出航できません」

と説明してくれればいい。

しかし、それもない。

Messengerで、

「悪天候だからキャンセル」

と知らされただけで、すぐ納得しろと言われても無理がある。

以前、フィリピンで外国人オーナーのショップと取引して、嫌な目に遭ったことがある。

今回も、あの時の記憶がよみがえった。

人は疑いだすと、とことん性格が悪くなる生き物である。

そんな疑念を抱えたまま、部屋でじっとしていることなどできなかった。

午後、タクシーを雇って港へ行った。

出航を待っていたはずの港で、記念撮影。
出航中止となった日のプエルト・プリンセサ港。
この国では、いつまでも落ち込んでいることができない(笑)。

雨は少しパラついていたが、海が大荒れしているようには見えなかった。

運転手さんがダイビングショップを探してくれた。

一件目は閉まっていた。仕方なく二件目へ。

こちらは開いていた。

店のオーナーは女性だった。

事情を話すと、驚くようなことを言った。

「うちも船を持ってるけど、出航できなかったら返金するわよ」

「えーーー。でも私、返金できないって言われたんです」

ママさんは、肩をすくめた。

疑惑、再燃。

ひょっとしたら、出航すると逆に赤字になるから、なんとか取り消したかったのでは?

そんな疑念までムクムクと頭をもたげる。

5月25日午後10時52分、私はもう一度Discovery Palawanにメールした。

もし台風でキャンセルになったら、乗客への返金はどうなるのか。